子どもは死んではいけない人だから

小児がんとたたかう子どもたちを描いた映画「かぜのかたち」

小児がんと闘う子どもたちを10年間に渡って撮り続けた映画を見ました。登場する子どもたちは、小児がんにかかり、治療の後退院した子ども達。画面の大半は年に1回行われる「がんと闘う子どもたちのキャンプ」の様子です。

小児がんは今では10人のうち7人から8人は治癒する病気です。とはいえ、半年から1年以上は入院を強いられ、決して生易しい病気ではありません。治療は苦しいけれど、子どもたちは死の不安とも向き合いながら、家族や病院スタッフの献身的なサポートを受けて病気と闘ってきた、その日常も映し出されます。「髪が抜けるのはいや」「もう大丈夫だよ」という医師との会話、病室でのインタビューに笑顔で答える子ども達。苦しい顔ばかりしているわけではないのです。

キャンプには、何年もの経過観察を経て治癒した子どもが大人になって、ボランティアとして参加しています。製薬会社に就職した若者、放射線治療を受けたことを心配しながら結婚し、母親になった人、看護師になった人もいます。「私たちが元気で生活することは、今闘っている人たちの希望になるから」「病気になって成長したと自分でも思う」と語る彼らの表情はやはり、同年代の若者よりずっと大人っぽい感じがします。

キャンプでは、退院して学校へ戻った後いじめにあったことなどを話し合う場面も出てきます。特別扱いされかわいそうがられることにも傷つき、それでも「大きくなったら先生になって、命の大切さを子どもに教えてあげたい」と夢を語ります。10年間の間にはその途中でなくなる子どももいて、キャンプの主催者の一人細谷医師が亡くなった子どもの名簿を携えて四国遍路の旅に出かけるシーンも出てきます。

10年間の子どもたちの成長の記録であり、医師や家族の悩みと献身、亡くなった子どもたちへのレクイエム、そして何より「生きられることのありがたさ」を雄弁に語る映画です。生きていることが当たり前ではないことを体験した人の強さに乾杯、生きることに悩む若い人に見てほしいと思いました。          (AY)

映画は、8月28日(金)まで10:30〜、12:40〜
ポレポレ東中野(03-3371-0088)で毎日上映しています。