今こそ八ッ場ダムは中止を

ダム予定地はがけ崩れの危険地帯
ダム予定地はがけ崩れの危険地帯
政権交代が実現し、新内閣国交相が、公共事業の中止をまず宣言したのが群馬県の八ッ場ダムです。調布・生活者ネットワークは、「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」の活動を支援し、東京都を被告とする公金支出差し止めの住民請求裁判では、調布ネットの会員も何人も原告に名を連ねています。

効果が見込めないダムだから中止に

 八ッ場ダムの計画が持ち上がったのは1952年、カスリーン台風の被害で東京が水浸しになり、これをはるか上流のダム建設で防止しようということでした。加えて東京を始めとする首都圏の水不足の解消がダム建設の理由とされました。
 現実にはそれ以来50年間に渡って、当時ほどの大水が利根川の観測点で観測されたことはありません。また、計画当時は敗戦から日が浅く、利根川流域の山は材木が切り出されて山の保水力はほとんどありませんでしたが、50年たって山の緑が回復しています。洪水対策ならば、森林の適正管理と川の護岸整備のほうがずっと効果的です。

推進の理由は「ここまで出来ているから」・・・?

民主党政権が中止しようと言い出した途端に、「もう7割の予算を使ってここまで出来ているものを止めるなんて」と反発する声が上がりました。7割の予算を使ったのは事実でも、事業が出来ているとは言えません。国交相が入札中止にしたことからもわかるように、ダム本体の工事はまだ始まっていないのです。
 効果のない事業にこれまでつぎ込んだ費用を惜しがって、さらに突き進むのは賢いやり方とは言えません。ダムを作れば、建設費が増額されなくても、その維持にも多額の費用がまたかかるのです。

地元の生活再建を最優先に

 50年以上もダム問題に翻弄され続けた地元の人の怒りはもっともです。数年前、現地を訪れたとき、「私らは東京の人の水がなくて困るって言うから、いやいや承知したのに」と怒りを向けられました。30年、20年前に中止が決断されていればこれほどまでの地元の疲弊はなかったでしょう。公共事業を見直すための法整備、また中止の場合の地域生活再建のための法整備がぜひとも必要です。
 ダムが出来るという前提で、道路などの補修もされないまま放置されてきた地域です。ダム事業は中止してもしっかり生活していける地域を取り戻すために、国は地元に暮らす人々の声を聞いて最大限支援すべきだと考えます。