福島県立小名浜高校演劇部公演 「三人家族2017」

8月9日の午後、小名高シアター震災復興支援プロジェクトとして、せんがわ劇場で行われた福島県立小名浜高校演劇部の公演を鑑賞しました。吉田復興大臣も来場していました。題名は「三人家族2017」。福島県いわき市の海辺にあるお寺を舞台に、両親を亡くした兄と弟、妹の3人の家族。檀家に寺を継ぐよう頼まれて悩む長男が主人公です。僧侶だった父の姿に自分を重ねて考え込む長男。

もう一つのテーマは原発事故で分断された人間関係です。主人公のガールフレンドで優等生の優子。その父は東電社員で、現在も福島第一原発で事故の収束作業に従事しています。その家族に投げかけられる周囲の心無い言葉。優子は「東京の大学で原子力工学を学び、廃炉作業に当たりたい」と語りますが、檀家の一人は「私の妹は農家に嫁ぎ、これからという時に農業ができなくなった。ここに残るかどうかで家族も離散した。その責任は東電にある」となじります。

この重いテーマには、最後まで鑑賞した吉田大臣も「現場で働く東電社員に責任はない。劇中の被害者は彼を責めているのではないという老師の言葉が真実だろう」と語りました。

兄弟の父は、津波で亡くなった檀家の人50人もの弔いや追悼に心血を注いだ末に亡くなったのですが、その真摯な姿に触れた思い出から長男が僧侶になる決心するところで劇は終わります。

原発事故で甚大な被害を受けた福島県の高校生たちが、現実を見つめ、未来に向かって歩もうとする心意気が十分に伝わる力作でした。加害者と被害者の枠を越えようとする大きさも感じられました。現実は厳しいし、放射能被害の実相に不安はありながら、復興に向けて歩みだそうとする若い力に感動しました。

この劇は、昨年大きな地震災害に遭った熊本県と調布市の後、秋に地元で上演されるそうです。