講師は、NPO法人アジア太平洋資料センター理事の佐久間智子さんで、スピーディな語り口で、水道の民営化をめぐる世界の危機的な状況をお話していただきました。
2000年に東京都水道に一元化した調布市の水道が、来年度から完全に東京都の運営に変わります。これまで、水道管の管理など市の水道課が東京都から委託されていた業務も東京都が行うことになり、ゆくゆくは民営化するという方針です。この民営化についての問題点を学習会から学ぶことが出来ました。
東京都の民営化は、東京都水道の職員削減で水道技術者がいなくなるため、退職した職員が属する団体に管理業務などを委託するものだという事です。ただ東京都が民営化の方針を打ち出したことで、外国企業が水道事業に参入してくる可能性もあるとか。今後の民営化についての課題を考えることが出来ました。
水問題から世界を見ると
現在、世界中で9億人が安全な飲み水を得られず、24億人が適正な衛生設備がない状況で暮らしている。不衛生な水が原因で死亡する人は年間357万人以上。
日本に暮らす私たちには想像も出来ないが、安心して水を飲み使っている人類は少数派なのだ。気候変動で降雨が減少したり、洪水が起こったりすること、下水の垂れ流しで土壌と地下水の汚染が進むこと以外にも、水道事業の民営化やダムの建設で水が手に入らない人が大勢いるということだ。
水道を民営化するとどうなるか
世界でいち早く水道を民営化した国は、イギリスとフランスだそうだ。意外な感じもするが、とにかく両国の水道会社はその技術を活かして、水道設備の整備が遅れていた途上国に乗り込んだ。世界銀行や開発機構などの国際機関の後押しも得て、水道事業を進めた。が、もともと営利が目的だから、過大な水需要予測に基づく過大な水道施設を建設し、高い水道料金を徴収しようとする。一般市民が払えないほどの料金設定、料金不払いの人への給水停止などから、南米などでは国家を転覆するほどの問題にもなった。
水道民営化の元祖フランスでもパリやグルノーブルが再公営化され、他の国でも再公営化の動きは多い。水は命に直結する。水道料金の高騰などで水を営利の対象とすることの危険に気づいた動きだ。
水は誰のものか?
一方で水道事業が投資の対象として買収される例も後を絶たない。水道会社の株を金融資産が買いあさっている実態もある。水戦争が起こると予測されている21世紀、水源林の買収も起こっている。ペットボトルに地下水や湧水をつめて売っている企業が、その地下水・湧水を涵養する費用を負担していないことはいうまでもない。有限の水資源は社会全体の資産として、社会全体で守り公平に利用していくという視点が不可欠である。
そう考えると、公営水道を税金で維持し、水道技術者も公務員として雇う、そういう選択肢も再度検討する必要がある。水道を民営化した国々の失敗に何を学ぶのか、私たち市民が問われている。