オランダの教育に学ぶ ~問われる日本の教育~

後半から会場にいた保坂世田谷区長も加わりました

オランダの小学校のある日の授業風景。

オランダの政治家が「移民のモロッコ人は出て行け」と発言したことに対して、

①オランダ人は出て行くべきか?

②この発言をした政治家は逮捕されるべきか?

というテーマで、自由に意見を出し合っているのは、小学校4年生から6年生の異年齢学級の子どもたち。

そんなビデオが、イエナプラン教育を広める教育研究者のリヒテルズ直子さんと、元文部科学省事務次官の前川喜平さんの先月行われた対談の冒頭で流れました。

このようなタイムリーな題材で市民性を育てる授業は、日本では高校でも行われていないのではないでしょうか。 オランダは移民が多く、宗教やバックグラウンドが違う人たちが対話を通して民主的な社会をつくっていくことを教育のひとつの目的として、4歳から身近な題材で、サークルになって互いの顔を見ながら自分の意見を伝え、他人の意見も尊重する対話を積極的に行っています。

オランダのイエナプラン教育では、自分でたてた時間割で、パソコンなどを使って自立的に学ぶ時間があります。また、全生徒を対象に個別の基礎学力の発達をモニターし、ひとりひとりがそのときに必要な学びに取り組み、半年後には確実に伸びるようにする教育制度が10年前からスタートしています。

子どもは、わかった!!という達成感で、また前に進もうという意欲が持てます。しかし、日本の画一的な一斉授業では、一人ひとりの理解度や興味・関心には関係なく授業が進められ、九九や分数の計算を取りこぼしたまま中学に進み、数学の授業についていけなくなる生徒も出ています。

リヒテルズさんは、今の日本の教育は入試制度ありきで知識を詰め込むことに偏っているが、これからは大規模な気候変動や原発問題など、まったなしのグローバルな課題を乗り越えていくためには、思考力、想像力を発達させ、意見を伝え、協働して行動し社会に貢献できるための教育に変えていかなければと言います。

前川さんは、生涯にわたって学び続けることができる力をつけるのが学校教育の役割であり、それが身についていないと大きな権力にひきずられる。愚かな国民は愚かな政府しか持ち得ないと、今の日本の状況を示唆しました。道徳の教科化については、ある出版社の教科書を問題だと指摘し、「挨拶の仕方などが載っているが、型にはまった行動や、思考の刷り込みは危険。また、社会は国家までの捉え方しかなく、地球規模の視点がないのは大きな欠落。文科省では、考えるひとつの題材として教科書を使い子どもたちに議論させるよう指導している。教育が大きな岐路に立たされている」、「今の大人も自分の考えを言えないが、そうできる場を経験してきていない。学校で先生が求める答えを言うように誘導する学びから脱却する必要がある。変わっていくためには、現場の先生の自由度を高めることが必要」など、ユーモアを交えながら的を得た歯に衣着せない発言でした。

日本の教育も早急に40人学級の一斉授業から脱し、一人ひとりの発達のタイミングに応じ、自己肯定感を持ちながら力を充分に伸ばせる教育に変えていかなければなりません。教育は確実に未来の社会の姿につながっているのですから。変えるためには、保護者・市民が教育に関心を持ち声をあげて行くことです!オランダでもその過程があって、今の教育が実現しています。